■ ユニクロが攻めてくる
もう30年も前の話。
関東に数十店舗を構えるメンズウエアーショップと仕事をさせていただきました。
取締役会長とのダイレクトなビジネスでした。
「山陰の方からから新たなライバルが本格的に関東に攻めてくるらしい」
「・・・・・・山口組かな?」
「広島や山口あたりで展開していた大型の郊外型の店舗だ」
「それが関東に進出してきて多店舗展開するらしい」
「外観はスポーツスタジアムのイメージを作り、旗まで立てる。
スーパーマーケットの食品売り場のようにカゴを持って、お客が自由にそれに服を入れてレジで清算するスタイルを採っている。
店員が声をかけることはない。
今まの洋服店にはない開放的なスタイルだ」
外観図を見たがまさに開放的でスタジアムの雰囲気だった。
ユニーク・クロージングといい、ユニクロと呼ぶらしい。
「このまま攻められてきたらひとたまりもない。先手を打ってそのスタイルのいいとこ取りをしてさらに一歩進んだ展開をしたい」
「対抗手段の一つとして 新しいブランド名とロゴタイプやマークを考えてほしい」
当時のユニクロの企業理念やミッション、就業規則などが細かく書かれた文書を読んでみた。(確か30ページくらいあったような・・・)
気取りや嘘のない理にかなった文章であったと記憶している。
「カジュアル」よりさらに一歩進んでみたら・・・・。
これが自分の提案でした。
カジュアルより先にあるもの、カジュアルは古いと思わせるもの・・・?
なんだろうか・・・?
ひとつの結論は「もっともっと素、そして快になろう」というところでした。
素は素肌の素、素敵の素、素材の素、素直の素、素朴の素。
快は快適の快、快楽の快、愉快の快、快いの快。
これからの日本が進みたいところ。
愉快–PLEASUREのPLES
カジュアルよりもっと深く広がりのある基本 Basic constractionのB-CONS
これらがはじめのジャブ的な提案。
ラフアイデアでした。
この中で却下されるのはわかっていながらちょっと進めたかったのが、
これ ↓
素や快を求めていくと農業というものがひとつの都会のステータスになる。
といった考えから 男女(夫婦、恋人)が都会を背景に農業を勤しむというもの。
あくまでも背景に都会があるということが重要。
もちろん予想通りの落選で、
「農機具が置いてあるなんてとんでもない。なに言ってんだ!」
との話で、それを覆すだけの論拠は持ち合わせていませんでした。
——時は進んで——–
先日の日曜日に農業体験の見学会に行ってきました。
体験は一年間。延長OK。
若いカップルも多く、車で高速を使って毎週一時間かけてくるご夫婦もいらっしゃる。
人気が上昇中で結構な人数。
あのKAIブランドはともかく 「やっぱりこのようになったなあ」とほくそえんでおりました。
あの当時、ある服飾関係のマーケッターと雑談してKAIブランドを見せたとき、えらく感心されました。
「素晴らしい。でもこれはダーバンのようなおしゃれメーカーの一ブランドとして先の長い展開をするならいいね。社運をかけるには進みすぎているね」というもっともなご意見でした。
あらから20年。
ユニクロは関東はとうに制覇して、世界中に根を張った大ブランドになりました。
あのメーカーは頑張っていますが店舗縮小は余儀なくされました。
コストがかかりすぎることもあって、新ブランド展開は見合わされました。
提案どまりとなりました。
さあ 一年間農業、申し込むか。